- 編集後記 -

40歳から手に入れる 美しい歯と歯ならび

数年前から私の周辺で、

「矯正してみたい」
「ホワイトニングに興味がある」
「銀歯を白い歯にしたい」

など、口元まわりの要望を多く耳にするようになった。そんな折に、旧知のライター山崎潤子さんが48歳で歯列矯正を始めたので、「おお!」と興奮して、「必要な歯の情報がひとまとまりになっている本があるといいな!」「山崎さんの体験をベースに取材して!」と勢いよく企画したのがこの本だ。

専門的な本ではあるのだが、歯科医が書くのではなく、「実際に体験した患者としての立場」でライターの山崎さんが書く、というのが企画の肝。山崎さんの正直な文章が魅力的だし、歯科医への取材経験も豊富なので40代が必要な歯の情報の選別も安心してお任せできる。

でも、医学的なところに間違いがないか見てもらいたいし、虫歯や歯周病の知識や歯磨きなど、「知ってるつもり」の情報も深く知りたい。山崎さんは裏側ワイヤー矯正だったので、それ以外の体験者の話も聞きたい!と、作っていくなかでどんどん欲深くなっていった。そんなわけで、協力者がどんどん増えていったのが本書である。

矯正の章の取材と監修を引き受けてくださった阿佐谷矯正歯科医院の國井明美先生は、ご自身も40代から矯正を始めた経験者。取材が有益だったことは言うまでもないが、写真の貸与にまで協力してくださった。専門的な写真を載せることができたのは、國井先生と協力会社さんのおかげである。

また、山崎さんがライオン商品のファン!ということで、ライオン株式会社さんにも協力をいただいた。突然電話をかけて取材のご依頼をしたのだが、電話に出られた広報担当者が親切な方で、オーラルケアマイスターさんへの取材がかなった。歯磨きの方法や虫歯の仕組みなど、基本的なのに目からウロコ!の情報をたくさん得られたし、企業への信頼が増して私もライオン商品のファンになった。

「30代以上で矯正している人に取材したい!」という希望には、弊社代表の樋口がほうぼうに聞いてくれた結果、販促ツールの制作でお世話になっているPR広告さんと用紙会社の竹尾さんの担当者の方が、体験記に出てくれる方を紹介してくださった(みなさん美しい方ばかりで眼福だった!)

関わってくださる方が増えるほど、本が厚みを増していく気がした。出汁の旨味が濃くなっていくような感じだ。

デザインの話。

3年前の創業時、各所にたくさんの書類を出さなければならなかった。どんな事業をしていきたいか、どんな出版社にしたいのか。くどくどと説明すると伝わらない。短い言葉で「こんな会社です」と言えるといい、とのことだった。

数日間ぼんやりと考えていて、ある日丸ノ内線のなかでひらめいたのが「美しい実用書」。文芸に比べて読み捨てられる印象がある実用書において、「美しさ」なんて二の次だと思われているかもしれないけれど、いいものは実用性と美しさを兼ね備えてるんだよな!と、会社のキャッチコピーにすることにした。

今回の本は「矯正のしくみ」や「歯周病」「口臭の予防」などなど「ド実用」の内容だったので、「美しい実用書」の見せ場だ!と張り切る気持ちだった。

デザインをお願いしたのはオフィスキントンの加藤さん。「本としてのかわいさ」と「実用的な要素の伝わりやすさ」の両方をかなえてくれた。素敵な装丁に目がいくが、中身のレイアウトにご注目を。フォントや罫線など細かい違いで何案も出してくれて、二色刷りの色もいろいろな案をご相談できてありがたかった(最初は黄色だったのだが、「歯」に合わないことがわかって蛍光ピンクになった)。欄外にイラストを配することでわかりやすさが増したと思うのだが、これも加藤さんのアイディア。

超絶かわいいイラストは、あわいさんによるもの。あわいさんの描く女の人は、ただかわいいだけじゃなくって、性格や生活が見えてくるのが不思議。「この人と友だちになりたいなあ」という女性が描き出されるのだから、ラフをいただくたびにワクワクした。「歯を見せたい」とか「自然な笑顔で」などたくさん注文をつけてご苦労をかけたし、専門的な説明イラストにたびたび修正をお願いすることになったのに、いつも厭わず描いてくれてありがたかった。

なんだか「ありがたかった」が続く編集後記になってしまう。本当にたくさんの方の力添えでできた本なんだなあと改めて思う。

いちばんの感謝は、著者の山崎さんに。体温の伝わる実感こもった原稿と、誠実に整理された情報のバランスが素晴らしかった。読者への思いやりに満ちた本になったのは山崎さんの優しい性格のおかげだと思う。打ち合わせのときに、「クサイこと言うけどさあ!」という前置きで、一生懸命仕事する大切さや好きな人と仕事する幸せを説いてくれたのを、制作中に何度も思い出した。

「40代以上」に向けた「歯の本」ということで、とてもニッチな企画である。でもしっかり読者に届けて、長く愛してもらえる本にしたい。

2021年8月12日 編集者 飛田淳子