- 編集後記 -
麻衣子さんと学ぶ 正しい家計管理
15年ほど前、家計管理の著者をずっと探していた。
巷にあふれる「節約術」「貯金術」などの小手先の方法ではなくて、もっと深い「哲学」を持っている著者はいないだろうかと、書店に行くと、家計やお金の棚に立ち寄り、「いい人いないかなあ」とチェックするのが習慣になっていた。
ある日、丸善丸の内本店の、お金の棚の上のほうに、地味な佇まいながら気になる本を見つけた。かなり上のほうの棚に差してあったので、脚立を持ってきて手を伸ばして、ようやく引き抜いた。『貯まる生活』(文藝春秋)。2011年に林總先生が出された本だった。
一読して、「おお、ここに家計管理の真の目的と哲学が書いてある!」と感動した。「この著者にお願いしたい!」と、林先生にお手紙を書き、できた本が10万部を超えるヒットになった『正しい家計管理』なのだ。
最近『貯まる生活』が絶版になっていることを知り、あの小説形式で「正しい家計管理」を伝えられたら……と思って改訂版を企画した。それが本書『麻衣子さんと学ぶ正しい家計管理』。当初は、「テクニカルなことを『正しい家計管理』にあわせて改訂すればいいかなあ」と軽く考えていたのだが、林先生とライターの山崎潤子さんと話し合いながら、今のニーズに合っているものに……と思って編集していくにつれ、「これは、大手術が必要なやつだあああ!!」となった。結局、新幹線の中でレクチャーを受けるという形式以外、構成も変え、ほぼすべての原稿を刷新することになってしまった。
さらに、謎の紳士・石丸先生の秘書「犬のサンちゃん」まで新登場。これには理由があって、小説形式で進んでいくので、なんとなく読者が取り残されている感じがしたからだ 。サンちゃんが読者に直接話しかけるスタイルにして、難しいことを解説してもらおう!そうだ、マンガにしちゃおう!と思いつき、コママンガのコラムを差し込んだ。

イラストを描いてくださったのは清家正悟さん。デザイン担当のアルビレオさんにイメージをお伝えしたところ清家さんを推薦いただいた。愛嬌たっぷりのサンちゃんやぽんちゃん、しーちゃんなどの愛すべきキャラクターが本を賑やかにしてくれた。
本書は主人公の麻衣子さんが新幹線の中で出会った謎の紳士・石丸氏から、お金の哲学と家計管理について学ぶ。家計の管理術や方法論はもちろんだが、何よりグッとくるのが、石丸氏=著者からの熱いメッセージだ。なかでも、いちばん言葉に力が入るのが79ページのここ↓
石丸は真剣なまなざしで麻衣子を見た。
「君の夢を教えてほしい。人生は有限だ。一生で使えるお金も有限なんだ。一度きりの人生、夢をかなえるためにお金を使おうじゃないか」
一度きりの人生、夢をかなえるためにお金を使う。そして夢とは、将来のことだけではなく今現在の「やりたいこと」でもあるという。
ほかにも熱のこもった名言が満載なので、考え方のエッセンスに触れるだけでも、人生が変わると思う。
店頭で見かけたら、ぜひぜひお手に取って、ちらりとでも読んでみてください。どんぶり勘定の方、市販の家計簿に挫折した方に特におすすめの本です!
2025年4月12日
編集者 飛田淳子