- 編集後記 -

自分を知る本 SEX・恋愛・結婚編

白状すると、本書の企画は、営業的な理由から立案した。
前作の『自分を知る本』は、発売から数年経っているが返品率は10%台、現在8刷のロングセラー。好成績と言っていい。それでも書店で平積みをキープするのはむずかしい。書店に届く新刊が多いため(1日200冊~300冊と言われている)、刊行から時間が経つと好成績であっても返品されてしまう。
「シリーズ2作目を出せば、前作をもう一度店頭に並べるチャンスが生まれる」。そう思って二作目を考えた。

最初の企画書は『恋愛・結婚編』としていた。橙花さんが以前おっしゃっていた「数秘は婚活に使える」という一言を思い出して、数字ごとのアプローチ法を柱に本を作っていこうとしていた。
企画書をお送りすると、橙花さんから「実は、取り組んでみたいコンテンツがあるんです」とLINEが届いた。「セックスと数秘についてなんです」と続く。
おおお! それはめちゃくちゃおもしろそうではないか! 自分で企画を立てといてなんだが「恋愛・結婚」でそそられなかったのが、「数秘×セックスならば深まりそう!」と勢いが出た。
橙花さんがなぜ「セックスと数秘」を研究したかったのか。その理由は、

・セックスレスで悩む人が本当に多い。「占いの現場」にいるからこそ切実な悩みを知ることができる

・社会性を優先するあまり、自分の心、そして体をないがしろにして苦しむ例をたくさん見ている

・体の欲求に耳を傾け、体を大切にすることこそが、自分を知るということではないか

・体を使って楽しめる期間は、意外と短い。体は一生につきひとつだけ。せっかくひとつの体をもらったのだから、欲を開放して、体で生きてほしい。

など、非常にまじめで真摯な思いがあった。

シリーズの続編ではあるが、単純な「続き」にはならなかった。牛久保さんのみずみずしいフルーツのイラストも進化しているし、アルビレオさんのデザインも、文字のレイアウトは前作と同じなのに、色味や色校への指示などがいまっぽいし新しいなあと感じた。

いちばん進化しているのは、著者の橙花さん。制作中何度も、「前作に書いてあることと違いますが……」と問い合わせた。
前作を愛読くださっている読者の方に矛盾を感じてほしくなかったからだ。
橙花さんからは「数年前はそうとらえてたけど、最近考えが変わってきた」「本質だけ見るとそうなんだけど、結婚となるとまったく違う面が見える」などとの返事。
「えー!!そんなに変わるもんかな」と思って、疑問点や矛盾に感じる点を一つひとつ聞いてみた。納得できるまでしつこく聞いたら、「なるほど!」と思えるところに辿りつける。さすが橙花さん!といつも思った。そして、そうやって深掘りしながら作り込んでいくことが、すごく楽しかった。

「単行本は水物。一つひとつまったく違う。だからマーケティングなんかできない」。はじめて入った会社のS先輩が言っていた言葉だ。今回、特にそのことを実感した。

編集者として新しい挑戦をすることと、既刊を売り伸ばすための商品展開をする、ということ。このふたつについて、自分のなかでうまく折り合いがつけられないことがある。
既刊を売り伸ばす大切さを心底実感しながらも、どうしても「新ジャンルに挑戦しないのはダサい」と思ってしまうからだ。
でも今回、シリーズ展開も「新たな挑戦」になることを橙花さん、イラストレーターさん、デザイナーさんが思い出させてくれた。
本は本当に「水物」で、だからこそ作るのが大変でおもしろい。
みなさま、今回も本当にありがとうございました。深謝。

2022年10月12日 編集者 飛田淳子