- 編集後記 -

射手座大百科

ご縁があって星占いや数秘術など、これまで何冊もの占いの本を作る機会に恵まれたが、もともと占いに興味があったり詳しかったりするわけではない。

たとえば星占いに詳しい方は「月は水瓶座で、水星は獅子座で、アセンダントがなんちゃらかんちゃら」といろいろご存じだが、私は何度聞いても、自分のホロスコープが覚えられない。当たるのか、当たらないのかも、よくわからない。(あ、水星逆行だけは超当たる!と勝手に思っています。経験値・笑)

でも、占いっておもしろいなあ、とはすごく思う。いにしえから語り継がれた世界観を味わうことも、友だち同士で「あるある」を楽しむことも、自分の「特徴や傾向」を生まれ持った星を通して知ることも、そしてそこから力を得ることも。

星占いは、紀元前2000年前という気が遠くなるほど古代の天体観測から始まり、現在に至るまで生き残っている文化。これだけおもしろければ、生き残るよな!と納得している。

で、『射手座大百科』である。石井ゆかりさんの本を担当させてもらって長いが、「当たる、当たらない」という基準で原稿を読んだことはほぼない。ぐっとくるか、こないか。ただそれだけであり、いつも何か「ぐっとくる」のが石井さんの文章だ。だって、射手座の私が蟹座の原稿を読んで涙したりしているわけだから。

占いを「占い好き」の人だけにとどめておくのはもったいない。表現方法を変えてみて、広くあまねく伝えてみたい! そう思ってできたのがこの本だ。もとになっているテキストは『ジュニア版 射手座』(2016年WAVE出版刊行)。なぜ射手座を刊行したかというと、私が射手座だったから。射手座の友人・知人も多く、射手座研究会を構成しやすかったわけだ。

「だれでも来ていいよ~楽しんでいって!」という開かれたエンタメにしたかったので、総ルビ&イラスト満載にして、全ページのレイアウトを変えた。「射手座だけど当てはまらないわっ! わははは」とつっこめる余地を残したつもり(本につっこみクマちゃんも登場)。

全ページのレイアウトが違う、という本を作ったことがなかったのでちょっぴり不安だったけど、デザイナーの中村妙さんに引き受けていただいたので百人力! オープンマインドなのにそこはかとない品がある、素敵なデザインで本をまとめてくださった。

特に好きなのが、「失敗するとき」の見出し。ここだけちょっと曲がっている愛嬌。

イラストは、武者小路晶子さん。親しみのある線画は『グルテンフリーのひと皿ごはん』で描いてもらったけど、武者小路さんのインスタで拝見してすごく惹かれていた風景の作品を、このたび載せることがかなってうれしかった。

最終ページの絵。海と離陸したばかりの飛行機。だれかの旅の始まりを遠くから見ているような気持ちになる。
わくわくするような、なぜか少しさみしいような。

思えば、ラフを書き始めたのは2023年だった。やり始めてみるとなかなかどうして労力のいる作業で、自身の体調不良やほかの本の刊行もあって一時中断を挟みつつも、2年間コツコツと作ってきた。

初期のラフ。

中期のラフ。

タイトルの文字は福士大輔さんに作っていただいた。射手座の鋭さと愛嬌が文字に表れていて感動!

射手座の特徴が凝縮されているタイポグラフィ。

開きやすい製本、心地のよい紙の手ざわりを追求し、校了直前まで本文用紙を検討した。束見本をギリギリで追加作成してもらい、関係各所にご苦労をおかけした。

束見本3種。古宮製本さんの180度開く製本です。

長きにわたってお世話になった中村妙さんと武者小路晶子さん、何度も細かい確認に対応してくださった石井ゆかりさん、ルビ付けのご苦労をかけたDTPのつむらともこさんほか、本書に関わってくださったみなさまにお礼を申し上げます。
そして、射手座研究会のみなさま!
 「あるある」ネタのご提供、ゲラへの感想など、楽しく制作へご協力くださり、ありがとうございました!

占いを信じる人も信じない人も、好きな人も苦手な人も、本というひとつの「射手座の遊園地」で、楽しく遊んでいってほしいです。

「射手座」以外の方々、この本が売れて今後続けてシリーズ化できそうでしたら、またコツコツ作っていきますので、どうぞ気長にお待ちください。

2025年11月7日 編集者・飛田淳子