- 編集後記 -

ほぼ365日グルテンフリー献立日記

この企画を思いついたのは、ずいぶんと前のことだった。

たかせさと美さんの初めての本『新しい体を作る料理』を制作しているときに、「毎日の食事、写真に撮って見せてください!」と軽い気持ち(!)でリクエストしたところ、忙しいなか律儀に撮影して、LINEのアルバムにアップしてくれた。その写真をもとに構成した本が本書になる。

制作をスタートさせた今年の6月末。手元には毎日のおいしそうな献立写真が数百点。「写真選ぶのが大変そうだなあ」とは思ったけど、「新たに撮影する苦労を思えば、今回は写真があるからサクサク進められそう」とまたしても軽い気持ちでいたのだが、甘すぎた。大甘だった。

手元には「写真しか」なかったわけで、たかせさんにレシピのテキストを書いてもらう作業がそこから始まった。写真を見て、材料や調理方法を思い出し、テキストにする。文章を整えるのは、ライターの山崎潤子さんにもお手伝いいただいたのだが、何せほぼ1年間の献立なので、これがものすごい作業量となる。写真のスープには豆腐のようなものが見えるのに、レシピ原稿に豆腐が入っていなかったり、写っている写真がターサイなのか小松菜なのか問い合わせたり、確認事項も次から次に出てくる。

8月が終わり、9月になっても原稿を整える作業は終わらず、飲んでも飲んでも減らない風呂の水を飲んでいるような気持ちになっているところに、「こんなノートが見つかりました!」とたかせさんから連絡が。見つかった1冊のノートには、献立のレシピとメモが記されているではないか! たかせさん、このノートの存在をすっかり忘れていて、別の探し物をしているときにひょっこり出てきたそうなのだ。

ノートをもとに、もう一度テキストを作り直す作業が始まった。ノートのおかげで細かいレシピ、仕入れの状況、献立を考えたときのたかせさんの気持ちがわかり、本がすごく重厚になっていった。ノートが見つかって本当によかった!

作業を進めていくなかで、調味料や野菜の撮影をお願いしたり、抜けているページの献立を追加で考えてもらったり(もちろん調理&撮影も追加)、たかせさんに苦労をかけた。しかし、本がどんどん精度アップしていき、中身が濃くなっていくので、「いい感じになっている!」「充実してきている!」と声をかけあって、作業を進めた。このあたりはすでに部活の雰囲気で、励ましながら校庭を走っているのだが、それももう150周くらいは走っている感じ。

デザインは櫻井事務所さんにお願いした。櫻井さんもスタッフの中川さんも、細部まで美しく作ってくださるデザイナーさん。今回も写真の大きさ、文字の送りなど、本文をすみずみまでチェックして赤字を入れてくださった。

装幀に使われたボーダーのラインは、中川さんがダーマトグラフで手描きしてくださったもの。優しさとかわいさが同居していて、私はこの雰囲気が大好き。自分でも真似してダーマトグラフで線を引いてみたのだが、なぜか全然かわいくならない! やっぱりデザイナーさんの手には神が宿ってるんだなあと感じた。

夏からまったく記憶がない。土日祝日もなく毎日ひたすら作業していた。自分の読みが甘いからこんなことになるのだけど、作業していくと欲が出てくるのでしょうがない。いや、しょうがなくないか。自分の読みが甘いせいで著者に負担をかけてしまい、申し訳なかった。(読みが甘くて→苦労する。おもしろそうだから→見切り発車→苦労する。これがいつものパターン。そしてその苦労を劇場的にとらえて大騒ぎしがちなのだが、最初にきちんと見通せていたら、適切なスケジュールを設定できるのだから、恥ずかしい)

見本ができた日にたかせさんにお会いして、「今回、限界値を更新しましたね……」とふたりで労いあった。「お疲れさまでした!」と言い合うシーンを何度も想像したというたかせさん。「やっとここ(終わり)にたどり着いた」とホッとされた表情だった。本当にお世話になりありがとうございました!

分厚い本なので、DTPのグレンさん、校正の円水社さん、印刷所の方々ほか、多くの人にいつも以上に助けていただいた。みなさま、ありがとうございました。

長々と苦労話を綴ってしまったが、充実したいい本になりました。パッと開いたところに簡単で体にいいレシピが載っていて、毎日の献立のヒントになります。分厚いのに180度開きます。佇まいが美しい本なので、ぜひ書店の店頭で見てみてください!

2024年11月26日 編集者 飛田淳子