- 編集後記 -

すみれ書房版12星座シリーズ

前職で担当して、120万部突破した石井ゆかりさんの12星座シリーズ。発売から15年経った今年、大幅増補のすみれ書房版として発売させてもらえることになった。

50ページの増量。本が太りました。

装幀が大好評だったこのシリーズ。素敵な装画は、当時、相当に時間をかけて作られたものだ。まず、それぞれの星座の象意、色、その他さまざまなことについて、私とデザイナーの石松さん、イラストレーターのスドウピウさんが石井さんに数時間のレクチャーを受けた。

そこからスドウさんにたくさんのラフを出してもらい、図案が決定。絵は、木彫り(牡羊座)だったり、貼り絵(牡牛座)だったり、布とレースを組み合わせたり(蠍座)など、さまざまな素材&作画方法で、その星座にいちばん合った作品を作り上げてもらった。

だから今回、どうしても、「カバーを変えて、新装版化を謳う」という安易な選択ができなかった。いや、実は、トライしてみようとはしたのだが、最高のものを作ってもらったのでこれを超えることはできない、という判断に至った。(帯だけでもデザイン変更しようということになり、実際に案を出していただいたのだが、やっぱり「前回を超えない」ということになった)

以前担当した本を作り直すとき、どうしても前の版を読んでくださった方をイメージしてしまう。イメージする、というより、とらわれてしまう、といったほうが正しい。

「同じものを焼き直して、ラクして出したと思われたくない」。

「ここがこう変わったとアピールしないと、買ってもらえないんじゃないか」。

気がつくとそんなことばかり考えている。

そんな「とらわれ」が、ある素敵な人との出会いで変わった。私の習い事の若い先生で天秤座の人なのだが、フェアで分け隔てがなくて、ニュートラルな優しさがあって、石井さんの表現する「天秤座」そのものだなあ、と常々感じていた。15年前、彼女は中学生。前の本、読んでないよね、きっと。そこでハッとした。まだまだ届けたい新しい読者がいる、と。

さらに書店員さんにも後押ししてもらった。ゲラを読んでもらったところ、初めて読んで感想をくださる書店員さんがほぼ全員だったのだ!!

「読ませていただいて、ハッとさせられることが、ものすごくたくさんありました」

「私の今までの人生、見てたんですか!? ってくらい思い当たることが多かったです。びっくりしました」

「占いはいわば、人間の描き出した美しい夢。石井ゆかりさんのこの言葉で、初めて占いを信じる気になりました」

こんな感想をいただき、よし、未読の方に最高の形で届けるのが今回の使命なんだ、と思った。もちろん、石井ゆかりさんは原稿を全面改訂してくださったし、フィガロのムックのかなりいい原稿を収録させてもらい50ページも増補しているので、前の版を読んでくださった方にも満足いただけるはず。

9月の雨の夜、古巣・WAVE出版の担当者さんに久しぶりにお会いして、できあがった本をお渡しがてら、旧交をあたためた。場所は吉祥寺の「ゆりあぺむぺる」という喫茶店。奇しくもこの場所は、2010年3月に石井さんにいちばん最初の見本3冊をお渡しした場所だ。「え!!上製なの?? うれしい~、並製だと思ってた~💛」とおっしゃられ、「え!? 言ってませんでしたっけ?? 上製ですよ(ドヤ)」という会話をしたのを記憶している(大切なことをお伝えしてなかったんですね。昔から大雑把ですみません……)。

デザイナーの石松あやさん、新たなイラストを描き下ろしてくれたスドウピウさん、DTPのつむらともこさん、そしてていねいに原稿に手を入れてくださった石井ゆかりさん。前の版からずっと縁が続いていて、このようにお仕事できたこと、とても幸せでうれしいです。みなさま、ありがとうございました!

2025年9月8日

編集者・飛田淳子