- 編集後記 -
すてきメモ303選
この本の制作中、ずっと手元に置いて何度も読み直したハガキがあった。
『愛のエネルギー家事』の読者の方から、編集者あてに届いたハガキである。
「HPの編集後記を読んでいたら涙が出た、作り手の思いが伝わってきた、本を誕生させてくださってありがとうございます、紙の本が好き(1冊手元に置いておけば家族でシェアできる)」
そんなことが、きれいな文字で一面に書いてある。
2年前にいただいたこのハガキの存在を、ずっと忘れていたのだが、秋にひょんなことから出てきて、それ以来お守りのようにさわって、最後は壁に貼って、編集作業をしていた。
前作同様、この本は大変に手間のかかる作り方をしている。私がお題や質問を出して、加茂谷さんがぶわーーーっと言葉を出す。それをもとに聞き取り取材をして内容を深め、原稿をつくっていく。さらにいろんな質問が浮かぶので、新たなお題を出すと、また加茂谷さんからぶわーーーっと言葉が届く。加茂谷さんの原稿は意外な方面からボンボン飛んできて、書きやすいかな?と思ったお題でも「うーん、どうしても書くことができなかった」となる。うそをつかない(つけない)人なのだ。
どこへどう転がるかわからない、地図のない冒険のようなエキサイティングな作り方をしていたので、もうすごく楽しい! 楽しいんだけど苦しい。なぜ苦しいかというと時間が迫っているから。
悲しいかな、小社は新興出版社。老舗出版社とは取次さんの条件がまったく違う。同じ定価1000円の本でも入ってくるお金が違う。お金をもらえる時期も違う。そのほか出版時期に関する条件もあって、『すてきメモ』は2月までに出さなければならなかった! わーん(涙) 間に合わない(涙) でも、もっとよくできる! もっと深めたい! 焦る(涙)苦しい(涙)
そんななか、件のハガキが力をくれた。
ちゃんと作ったら、ちゃんと受け取ってくれる人がいる。それがものすごく支えになった。
「納得いくものを出版しよう」という社長の意見もあり、最終的に発売日をずらすことにした。その決断に至ったのは、このハガキのおかげである。読者の方の存在を近くに感じることができたからだと思う。
デザインのアルビレオさん、イラストレーターの本田さんにも、最初はすごくタイトなスケジュールでご依頼してしまった。非常識で恥ずかしかったけど、「やってみます」と言ってくださった(その後、やっぱり見本日ずらします!と連絡するのも、さらに恥ずかしかった!)。それにしても、今回もすばらしいお仕事! デザインもイラストも、斬新で熱い!
そんなこんなで、濃い内容の、思いやりにあふれた本が出来上がって、みなさんに感謝の気持ちでいっぱいなのですが、今回は2年前にハガキをくださった広島県福山市のKさんにspecial thanks!!である。本をお送りしようと思っている。住所しかわからないので、引っ越されてないといいな。
2022年3月10日 編集者 飛田淳子