- 編集後記 -

月で読む あしたの星占い

長年、実用書の編集者をやってきたが、編集後記というのをはじめて記す。

校了し、見本ができて数日経った本日2019年8月27日の思いを率直に書こうと思う。

本書『月で読む あしたの星占い』の企画は著者の石井ゆかりさんによるものである。スケジュールが詰まっているなか書き下ろしていただいたのは、「創業のご祝儀」のような、そんな個人的な気持ちもこめていただいたのだと思う。

「石井ゆかりが教える、専門用語がほとんど出てこない、いちばん易しい星占いのやり方」

なんて魅力的な企画だろう!と嬉しかった。

2月、最初に原稿をいただいたとき、下記のところに心を奪われた。

・「12種類の毎日」があって、それが2,3日に一度切り替わる

→なんか、ラクな気持ち。自分の一番好きな言葉「いいことも悪いこともそう長くは続かない」(by 母の友だちの70代Yさん)にも通じるし、いいなあ。

・「いい日、悪い日」があるわけではなくて、どんな日にも意味があり、なんとか乗り越えて自分の人生にする

→「自分の人生にする」という、意志を感じられる文章が好きだった

・ボイドタイムや水星の逆行など、思い通りにいかない時間の意味

→「物事はこうあるべきだ」「こうあらねばならぬ」と観念的に思い込んでいる世界の外側にある世界、という解釈が、すごくいいと思った。

ほかにも、「日記をつけるということ」「だれのせいでもない世界」など、石井さんが星占いとどう向き合っているかという部分が、私にとって魅力であり、生活に役立つ「実用」であった。つまり、いちばんの売りとしてPRしようとしていた「星占いをやってみたい人に向けて、石井さんが星占いのいちばん簡単なやり方を教える」というところから、自分の実感が離れていた。

でも、そのことに気がついていなかった。

創業してから半年、変な時空にいた気がする。

社の挨拶状やブックカタログ、HPなど、社のブランドイメージを伝えるためのいろんなコピーワークやディレクションに忙殺されて、いちばん大切な目の前の原稿に集中する時間がコマ切れだった。自由になったゆえに、仕事のペースがつかめない。いつも「陽にあたって緑の中で原稿を読みたいな」などと思っていた。うまく集中できず原稿を持ってデニーズやガストへ行って「陽の当たる席でお願いします」なんて街をうろうろしたりもしていた。

さらに、来客に次ぐ来客。旧知の著者、スタッフ、元同僚たちが創業を祝ってくれてすごくうれしかった。でも人と会うのは気が張るし、人に会う隙間に本を作っているような、そんな気がした。浅いところで仕事をしているのに、毎日必死すぎて気がついていなかった。

決定的になったのは、5月にカバーラフ案が出たとき。デザイナーの石松さんに10案くらいだしてもらった。プリントして書店に行って、置いてみた。

「いいのか、悪いのか、わからない」という気持ちになった。

愕然とした。そんなことある? いいのか悪いのかわからないって。

今まで通り企画書を書いて、しっかりと打ち合わせし、ラフをあげてもらったのに、どうすればいんだろう。

そこで初めて、「ああ、読者のこと、原稿のこと、この本の主題について、深く潜って考えていなかった」と気がついた。

石井ゆかりさん、デザイナー石松あやさんにお詫びして、時間をいただいた。(お二人とも「納得のいくようにやってください!」とあたたかかった)

紙にどんどん書き出した。この本の魅力、読者がどう出会うのか。毎日毎日書いてみた。

答えはちゃんと原稿にあった。

「簡単ではない日々を、なんとか受け止めて、乗り越えていくために、『〇〇の日』の次にまた別の日がくることを知る。つまり自分で少しだけ占ってみる」

そういう本だった。(いまさら!)

進めていたタイトルや帯コピーではそれが全然表現されていない。

全部やり直しである。

苦しいけど、もう読者はわかっているから、あとは一生懸命考えればいいだけ。タイトル案を考えては書店に行き、棚の前でコピーを見て、また戻ってを繰り返す。ようやく案を絞って、石井さんと電話打ち合わせするレベルにまでたどり着いた。前サブ案は石井さんが出してくださった。『月で読む あしたの星占い』。シンプルだけど、すごくいいタイトルだと、すぐにわかった。

1999年に書籍編集者になってから、いまに至るまでカバーラフが出た後に、タイトルを変えたことはない。20年もやってきて、何をしてるんだと恥ずかしかった。でもしょうがない、深く考えずに上っ面で企画を進めてしまった私が悪い。

編集後記って、こんな反省文を書くんだろうか。

でも、8月27日の今日、「恥ずかしかったけど、やり直していい本になってよかった」というのが、いちばんの気持ちだ。

編集の仕事について、自分なりの定義がある。

それは「作品を商品にするのが編集者の仕事」ということだ。

作った本を、お金を払ってでも自分の物にしたいと思ってもらいたい。

読んだ後、買ってよかったと思ってもらいたい。

読者と作品を魅力的につなげたい。

今回、変なつなぎ方じゃなくて、いいつなぎ方ができたと思う。いい本になってよかったと思う。

進行がめちゃくちゃになってしまったのに、素晴らしいお仕事をしてくださった、天才の3人石井さんと石松さんとカシワイさんに感謝します。

編集者 飛田淳子