- 編集後記 -
グルテンフリーのひと皿ごはん
料理本はむずかしいな、と思いながら制作し、見本ができた今も心を占めている気持ちは「むずかしかったなあ」ということである。
むかし、業界紙のインタビューを受けたとき、「いい実用書はどんなものですか?」という問いにこのように答えた。
「読み終わったあと、体が動く本です」。
どうやったら売れる本が作れるのか、という質問には、モゴモゴして明快な答えを言うことができなかったけど、この質問は即答できた。いい実用書とは読者の体が動く本である 、という考えは今も変わっていない。
料理本だったら、それはもちろん実際に料理を作ってもらえる本がいい本だ。
そして、本がボロボロになるまで使い尽くしてもらえたら、とびきりのいい本だ。
たかせさと美さんのレシピは、本当においしい。
おいしいだけではなくて、体にいい。
食べ続けると、体が軽くなって、頭がすっきりしてくる。
だから、読者の方に作り続けてほしい、自炊をし慣れていない人にも気負わず簡単にトライしてほしいという思いから、「ひと皿ごはんでいこう」と企画をスタートした。
しかし、ひと皿で完結することと、栄養バランスがいいことを両立するのはなかなかにむずかしい。著者のたかせさんが相当苦労してレシピを出してくださった。
そこに、私の「この手順めんどうくさくないか?」「材料多すぎ」「この調味料、ふつうの家に常備されてなくない?」などという、ずぼら主婦ゆえの突っ込みも入り、本当に何度も何度もやりとりしてレシピをかためていった。
レシピがかたまってからは、ご依頼したスタッフの方のすごい職人技で、本が何倍も魅力的になって、デザインが決まり、撮影が始まり、イラストがアップするごとに、「うわー、すごい、すごい!」と興奮した。
デザインの石松あやさん、写真の公文美和さん、スタイリストの久保百合子さん、イラストレーターの武者小路晶子さんの煌めく作品を、どうぞ店頭で見ていただきたい。
そして、目に見える「作品」ではないけれど、校正者さん、DTPのオペレーターの方、印刷所と製本所の方にも、とてつもなく大きな力をいただいた。
読者の方からはあまり見えない裏方の風景を、ちょっとだけご紹介します。
最後に、色をあわせてくださっている中央精版の職人さん
印刷立ち合いに来てくださったデザイナーの石松さん
古宮製本さんで製本中。180度開く特別な製本は、古宮さんのオリジナルです。
一折ずつ開きをチェック↑
本ができてからは(できる前からだけど)営業スタッフや書店員さんにお世話になる。
ここまで書いていたら、冒頭の「むずかしかった~」という私個人の感想が、どうでもよくなってきました。
関わる人のていねいな仕事がぐぐっと詰まったいい本です。
店頭で見かけたら、ぜひ手に取ってみてください!
お世話になったみなさま、ありがとうございました!
2024年6月18日 編集担当 飛田淳子