- 編集後記 -

3年の星占い 2021-2023

年明け「牡羊座」の原稿が届いて、プロローグを読んで涙がグッと出た。超いい原稿! ワクワクする!と思って進行していたら、牡牛座までいただいたところで、石井さんの筆が止まってしまった。

時は2020年3月。コロナ禍という未曽有の事態のなか「未来の占いの原稿を書く」という想像を絶する重い仕事である。石井さんのご苦労を思うと、「無理に出版することはない」と心が決まった。

「まあ、どうにかなるだろうなー!」「出せなかったらしょうがないさ!」と思っていた。

コロナウイルス感染拡大によって初夏に出す予定だった他の企画も保留になってしまったが、わりと楽観的な性格で、逆境に燃えるタイプなので、WEBショップ「すみれ書房の店」をオープンしたり、「不安な時代の家計管理」を緊急出版したり、「今できることをがんばろう!」と、張り切って前に進んでいた。

でも……やっぱり、コロナ禍で覆われた世界を生きるのは、つらかった。
すごく大変な年だった。不安だった。
「当たり前」がくずれて、いつも迷っていた。
春からどんなふうに過ごしていたか、あまり記憶がない。

夏ぐらいから、少しずつ原稿が入り始めた。

石井さんは書籍の原稿はもちろん、雑誌の小さな記事でも、WEBの記事も、とにかくどんな原稿もご自分で書かれる。ライターさんを立てる書き手もいらっしゃるけれど、とにかくすみずみまで、石井さんが言葉を選び紡ぐ。私が手を加えることは一切ない。

だからこそ、届いた原稿は、著者からの優しい手紙のような気がした。自分にめちゃくちゃ引き寄せて読んだ。
12冊の編集をしながら、言葉によって少しずつ元気になるのがわかった。
本ってすごいな、石井さんの言葉ってすごいな。
編集者というより、一読者として本を作っていった。

装丁の話。
この企画をスタートさせたときの装丁イメージは、かなりシンプルなものだった。
用紙のほうにアイディアがあったので、デザイン自体はシンプルに「無」に近いものにしたいなあと思っていた。

でも、夏の終わりのある日、自宅の階段で突然「ダメだ! シンプルじゃだめだ! 明るくにぎやかで楽しいものにしよう!」とひらめいた。
すぐに本田亮さんの絵のイメージが浮かび、デザイナーの石松あやさんに伝えると賛同してくださった。

本田さんのイラストは予想以上に素敵だった。
絵のなかでは、人々が出会い、ごはんを食べて、笑顔で語り合っていた。
またいつか、きっと、自由な日々がやってくる。
絵を見ていると希望がわいてきた。

こうして、12冊の本ができあがった。
2020年に制作したからこそ、こんなに希望に満ちた本になったのだと思う。

いつも以上に素晴らしい原稿を書いてくださった石井ゆかりさん、「明るい希望の街」を具現化してくださった本田亮さん、細部に至るまで気持ちの入ったデザインをしてくださった石松あやさん、この本に関わってくださったすべての方に、お礼を申し上げます。

大変な状況が続いていますが、全力で本の力を信じたいと思います!!!!!

2020年12月8日 
編集者 飛田淳子