- 編集後記 -

新装版 12星座

2007年11月に作った『12星座』を、このたび新装版化させてもらった。

石井ゆかりさんとはじめてお仕事した本がこの本だった。

12星座の連なりを「続き物のおとぎ話+解説」で表現する、という構成は石井さんのアイディアで、そこに至るまで2,3案ボツになった構成があったと思うのだけど、それがどんなものだったのか覚えていない。

当時の企画書を引っ張り出してみた。
企画書は3枚あって、最初の企画書の日付が2006年5月10日になっている。

「あたる」「あたらない」ではなく、何か大きいもの(宇宙、自然、星、歴史、周期)と 、今を生きる自分自身との関係の保ち方を教えてくれ、どんな人をも楽にするような文章 が、この著者の最大の魅力。

(おおお、31歳の私、そんなふうに感じたのか!)

著者紹介のメモにこう書いてある。

先日連絡を取り、お会いしました。とっても知的な人で、独自のボキャブラリーを持っ
ているのがよい。

(社内向けの企画書なので、ちょっぴり上から目線すみません)

企画を通すのが大変な会社だったので、企画書の文章はちょっと鼻息荒い感じ。でも石井さんのブログの文章がすごくいいなと思って、「著者の魅力を伝えるために、オーソドックスな12星座の本を出したい」とシンプル&ピュアに企画を立てた気持ちがそこに残っていた。

「おとぎ話+解説」以前の構成がどんなものだったのかは不明。ただ、1枚目の企画書は総ページが208ページなのに、3枚目はしれっと350ページになっていた。そして今回の新装版は376ページに……どんだけ増えるの……。

15年間、何度も読み返した本だけど、今回改めて熟読すると、石井さんが今よりも近いな、と思った。励ましややさしさがストレートに書かれていて、隣で話してくれているみたいに感じる。それをたぶん石井さんは「若書きで恥ずかしい」と思われるだろうが、「あのときにしか書けないテンション」がテキストに残っていて、「文章が持つうそをつけない性質」が頼もしいと思った。

(先日、ヒットメーカーの大先輩編集者とお話ししていて、「どんなに取り繕っても文章に人柄が出るから、愛のない著者とは仕事したくない!」と盛り上がったばかり)

文章に人柄が出るし、書いたときの気持ちや体調も出る。

「石井ゆかりさんってどんな人ですか?」って、今まで300回くらい人に聞かれたけど、文章そのままの人です。
人の弱さや脆さをわかったうえでの、やさしさと愛がある人。頭がよくて、読書家で物知りで、ユーモアたっぷりの人。文章の表現力はみなさんご存じの通りだけど、お話もおもしろいし「いい言葉」が詰まっているので、しゃべり言葉をそのまま原稿にしても濃い内容になると思う。それから案外姉御肌で「しょうがないなあ」って感じでいろいろと引き受けてくださる。増刷の連絡をすると喜ぶ前に「だ、だ、大丈夫ですか……?」と心配そうなメールが返ってくる。……石井さんについて語り始めたらたくさん語れるけれど、ひとことで、と言われたら、やっぱり「やさしい人です」と答えるだろう。

「石井ゆかりさんってどんな人ですか?」の別回答に「中二のセンパイ」というのもあるんですが、それは長くなるのでまた今度!

15年前と同じく、石松あやさん、史緒さんとお仕事できたのもうれしいことでした。石井さん、石松さん、史緒さん、ありがとうございました!

2023年2月7日 編集者 飛田淳子