- 編集後記 -

不安な時代の家計管理

2020年4月7日。
緊急事態宣言が出た日、3月に発売した新刊2冊の新聞広告を出した。
前から決まっていた日程を、動かすことはできなかったのだ。

多くの書店さんもお店を閉めざるを得ない状況で、
大金をつぎ込んだにもかかわらず、広告による動きはほとんどなかった。
半年かけて必死につくった本を積極的にPRできず、ネット書店に商品も入れられず、
うーむ、これはなんだかまずいぞ!

学校が休業中で、小学生ふたりが在宅しているため、仕事もあまり進まない。
食費(昼食やおやつ)やドリル代など、生活費も妙に増えている。

楽観的な私の心にも、お金の不安がぐぐぐーーっと押し寄せてきた。
そんなとき、本のタイトルがふと浮かんだ。

「不安な時代の家計管理」。

一気に企画書を書いて、『正しい家計管理』でお世話になった林總先生に連絡した。3日後にレジメをいただき、ライターの山崎潤子さんにも協力してもらうことになった。

はじめてのzoom取材。
「これからいったい、どうなっちゃうんでしょうか!!」
自分の不安をそのまま取材にぶつけると、林先生は「そんなに突拍子もないことは、起きませんよ」と、落ち着いていらして、家計管理で向こう3カ月の危機を乗り切る方法を伝授してくださった。

「3カ月経てば、状況は変わっています。だから、とにかく3カ月の予算をつくり、予算内に暮らすことです」。

私は先生がおっしゃる通りに、3カ月の予算をつくり、サブスクをいくつも解約し、食品在庫を把握&消費し、毎日残高を見て、予算内に暮らせるようにした。

不安はいつのまにか消えていた。

価値観にあった支出を極めたため、以前よりスッキリ気持ちよく生活できるようになった。

さて、本づくりの話。
「不安」というネガティブな言葉がタイトルに入っているため、なるべく希望を感じさせるビジュアルを使った装丁にしたい。そう思って櫻井事務所の櫻井さんと中川さんにご相談したところ、イラストレーターの上路ナオ子さんをご紹介していただいた。

上路さんは何案も素敵なイラストを描いてくださり、
その都度、櫻井さんと中川さんがデザインラフをつくってくださった。

装丁案のプリントを書店に持って行って、「これだ!」と決めたのがこの装丁なのだが……色校が出たときにまた悩んでしまった。

私は、不安なとき、落ち込んでいるとき、「自分よりパワーが強い本」を手に取ることができない。読者の方はどうだろうか。この蛍光っぽいピンクの帯が、強すぎやしないだろうか。
そこで、紙を変えて色校を試させてもらった。

うんうん悩んで、やっぱり未来への明るさを感じさせるものがいいな!と最初の案に戻ってしまった(すみません!)

取材中に先生がおっしゃったことを、胸に刻んで本をつくってきた。
それは、

「お金がないことで人は簡単に命を落とす。この本を読んで『自殺をとどまった』という内容にしましょう」

という言葉だ。
現実を正しくマネジメントする=しっかり手を動かして嘘のない家計管理をすることで、「かならず光は見える」。だから落ち着いてください、と本のなかで繰り返している。
著者はもちろん、関わる人すべての気持ちがこもっている本ができた。

どうか、必要としている人のもとに、この本が届きますように。

2020年8月3日 編集者 飛田淳子